歩留向上の秘訣

歩留まり向上に関して、試行錯誤の末、私たちが辿り着いた秘訣をお伝えする。

良くある問題

まず、ある一般的なケースをお話したい。
新しい年度が始まった。会社の方針も示され、我々の部署でも取り組むべく課題とその目標値が示された。
 
切り込み隊長である、あなた(一般的には係長クラス)は、早速管理図に新しい目標値を記入して、部下に今年度の取り組みについて話し始めるだろう。

あなたの立場を考えると、「カンパツいれず」に行動することは非常によいことで、ほめたたえる行動だと思われるが、あなたの部下達はあなたと同じ様に、カンパツいれずに、取り組み始めてくれるだろうか?

たぶん、あなたの話しは「理解は出来る」段階であり、「納得する」人は少なく、そのため、即行動を起すのではなく、反対に、「今でも一生懸命やっているのにそんな高い目標値など容易に達成出来るものではない!」

と言った反発をかってしまう事が多い。

こうなると、今年度の課題とその目標値は絵に描いたもちになってしまい、あなたの率いる有能な社員が遊んでしまう。

では、こうならないための方策は有るのだろうか。

私も、今でこそあなたにこうして話しができるが、その始まった当初はこんなにも順調にことが進んで行くとは思わなかった。

歩留まり向上の秘訣

さっそくそのやり方をお話ししよう。

先ず先月のロット毎の歩留グラフ、あるいは日々の歩留状況のグラフ(およそ30点以上あること)を用意し、そのグラフの横に、もう一ヶ月分のグラフが書けるスペースがあるグラフ用紙を用意する。

次に先月の歩留グラフの上に直尺を載せて、グラフの下の方から(歩留の低い方から)徐々に直尺を上げて行き、歩留のポイントの2点を超えた所に直線を引く。

そして、横の次月に使用するグラフの部分にその線を延長して引き入れる。

準備をするものはこれだけで、あとは、部下を集めて今年の活動のやり方を説明するだけである。

以下、説明の仕方。

ここに引かれた線が来月の管理限界線です。
よく見ると先月のワースト2点の上に引かれたものであって、
通常の大部分の歩留はずっと上方に有ることが判ります。

今月はこの線を下回る様な歩留のロットを発生させない気配りをしましょう。
 
万が一この線を下回った歩留のロットが発生した時は、皆で協力して、
真の原因を探し、確実に再発防止をして行く活動を展開し続けるのが今年の活動です。

そして、一ヶ月活動した結果、この線を下回る歩留のロットが発生しなかったら、また先回と同じ方法で、上方に管理限界線を引き直す。

(欲を言うと、この管理限界線変更は部下の中に委員会の様なものを作り、 そこに任せるやり方が出来れば最高となる)
 
これを一年間繰り返して行くならば、必ずあなたの目指している目標歩留は達成するであろう。

そして、なによりも良いことは、部下の反発は皆無に等しいことである。

補足になるが、歩留の年度目標値と言うものは、平均値で示されているものだが、活動のやり方は、「バラツキを無くしていくと、自然に平均値が向上する」と言う品質管理の基本的理念に基づくものである。